チキンステーキ ソース大全

84種を「6つの設計軸」と「3つの作り方ルート」で体系化する。
レシピを覚えるのではなく、ソースが作られる仕組みを手に入れるための資料。

🇫🇷 フランス古典 20 🌏 世界のソース 64 ⚗️ 設計6軸 📐 黄金比カード 12 🔧 トラブル対処

2026-09-10 作成 / 児島弘樹さん向け / 出典は末尾に明記

目次

  1. ソース設計の6軸(この資料の背骨)
  2. 3つの作り方ルート
  3. パンソース ─ 最重要の1本
  4. 乳化ソースと温度帯
  5. フランス古典の系統樹
  6. 世界のソース・カタログ84種
  7. 黄金比カード(即使える配合)
  8. 味が決まらない時の処方箋
  9. トラブルシューティング
  10. 皮パリを殺さない盛り付け
  11. 出典

結論から。 チキンステーキのソースは、覚えるべきレシピが84個あるのではなく、 6つの軸の配分3つの作り方の組み合わせでできています。 この2つを握ると、既存のソースを再現できるだけでなく、冷蔵庫の中身からその場で設計できるようになります。 84種のカタログは、その「配分の実例集」として読んでください。

1. ソース設計の6軸(この資料の背骨)

どの国のどのソースも、次の6つの要素の配分で説明できます。これは私がこの資料を整理するために立てた枠組みで、 料理界に「6軸理論」という定説があるわけではありません。ただ、84種を並べてみると、 過不足なくこの6つに分解できました

ソース = 6軸の配分 SAUCE この配分=個性 ① 油脂 バター・生クリーム 油・ココナッツ・ナッツ ② 酸 酢・ワイン・柑橘 ヨーグルト・トマト ③ 甘 砂糖・みりん・蜂蜜 玉ねぎ・果実 ④ 旨味・塩 肉汁(fond)・出汁 醤油・魚醤・アンチョビ ⑤ 辛味・香り 唐辛子・胡椒・花椒 ハーブ・香味野菜 ⑥ とろみ 煮詰め・乳化・ルー 澱粉・ピュレ・ナッツ 照り焼き=③甘が主役/チミチュリ=②酸+⑤香りが主役/ブールブラン=①油脂+⑥乳化が主役

図1:6軸の配分の違いが、そのままソースの国籍と個性になる。

使い方 ── 逆算で設計する

作りたい方向が決まったら、軸から埋めます。

2. 3つの作り方ルート

84種は、作り方で見るとたった3ルートに収まります。ここを分けておくと、 「今日は時間がない」「フライパンを汚したくない」といった条件から逆算できます。

A. パンソース

肉を焼いた同じフライパンで作る。 焼き汁(fond)を回収するので、材料を足さなくても味が濃い

所要3〜5分/洗い物が増えない/古典フレンチの主流

B. 乳化ソース

油脂と水分を混ぜて固定する。 バター・卵黄・マヨが柱。温度管理だけが難所

所要5〜15分/ごちそう感が最も高い/分離リスクあり

C. 混ぜるだけ

火を使わない。 刻む・混ぜる・置く。失敗がほぼ起きないので日常はここが主戦場。

所要2〜5分/作り置き可/世界の薬味系はほぼここ

3. パンソース ─ まず握るべき最重要の1本

ソースを「極める」なら、最初に手に入れるべきはこれです。理由は単純で、 1つの手順から数十種類のソースが分岐するから。使う液体とハーブを差し替えるだけで、 シャスールにもディアブルにも和風にもなります。

パンソースの4ステップ ① fond をつくる 鶏を焼いた鍋底の茶色い層 ② déglacer 液体を注いで底をこそげる 白/赤ワイン・酒・酢 出汁・ブイヨン・シードル ← ここが国籍の分岐点 ③ réduire 半量まで煮詰める(2〜4分) 水を飛ばす=味を濃縮 ④ monter au beurre 火を止めて冷たいバター 1カップに大さじ1〜2 手早く回して乳化 → 照りととろみが出る ②の液体と⑤の香りを差し替えるだけで分岐する 白ワイン+マッシュルーム +トマト+エストラゴン → ソース・シャスール 白ワイン+エシャロット +カイエン+粗挽き胡椒 → ソース・ディアブル シードル+生クリーム +りんご → ノルマンディー風 酒+醤油+みりん +バター少量 → 和風バターソース

図2:手順は1つ。②で注ぐ液体と⑤で足す香りが、ソースの名前を決める。

実践メモ

4. 乳化ソースと温度帯 ── 唯一の難所

ブールブラン、ベアルネーズ、オランデーズ。これらが難しいと言われる理由はただ一つ、温度です。 逆に言えば、温度計を1本持てば難易度が一段下がります。

ブールブランの温度帯 30℃ 45℃ 50℃ 55℃ 65℃ 75℃ 適正 分離ゾーン 50〜55℃ 最も安定してとろみが出る 65℃を超えると割れる 脂肪が分離して油が浮く 冷えすぎ 固まって重くなる 🔧 割れたら: 火から下ろし、氷を1〜2個入れて一気に混ぜる(温度を落としてバターを再固化させる)。 または冷水か生クリーム大さじ1を加えて強く混ぜ、新しい水分の周りに乳化を組み直す。

図3:ブールブランはバター固形分だけで支える弱い乳化。だから温度に神経質になる。

安定させる裏技

乳化の前に生クリームを大さじ1〜2加えておくと、乳化剤として働き、 格段に割れにくくなります。古典派には邪道とされますが、家庭では実用性が勝ちます。 バターは冷たいまま少しずつ入れるのも、温度を上げすぎないための技術です。

ベアルネーズはブールブランの兄弟

両者はエシャロット+酢の煮詰めという土台が同じ。 そこにバターだけを入れればブールブラン、卵黄とエストラゴンを入れればベアルネーズです。 卵黄が入るぶんベアルネーズの方が乳化は安定します。

5. フランス古典の系統樹

「母ソース」という言葉は聞いたことがあると思います。これは19世紀に一度、料理が言語のように体系化された名残です。 アントナン・カレームが1833年に4つの grandes sauces(ベシャメル・ヴルーテ・エスパニョール・アルマンド)を定め、 のちにオーギュスト・エスコフィエが『Le Guide Culinaire』でアルマンドをヴルーテの派生に格下げし、 トマトとオランデーズを加えて5つに整理し直しました。

母ソース → チキンステーキに効く派生 Velouté 鶏出汁+白ルー Espagnole 茶色い出汁+褐色ルー Hollandaise 卵黄+バター乳化 Tomate トマト Béchamel 牛乳+白ルー Suprême +生クリーム Allemande +卵黄 Poulette Chasseur +茸+白W+トマト Diable +カイエン+胡椒 Robert / Charcutière Béarnaise +エストラゴン Choron +トマト Moutarde Provençale +にんにく+ハーブ Cacciatora +オリーブ(伊) Portugaise Soubise +玉ねぎ Mornay +チーズ ※鶏には出番少 現代のビストロ/家庭ではここが主流 Jus(肉汁) ルーを使わず煮詰めだけ Beurre blanc 白W+エシャロット+バター Beurre noisette 焦がしバター+レモン Vierge オイル+トマト+ハーブ ルーで濃度をつける古典体系 → 煮詰めと乳化で濃度をつける現代型へ。軽さの要求がソースを変えた。 ※カレームは4つ(ベシャメル/ヴルーテ/エスパニョール/アルマンド)、エスコフィエが5つに再編。 オランデーズが「母」に昇格した正確な版・年については資料により記述が分かれる。

図4:母ソースの系統樹。鶏に効くのは Velouté 系・Espagnole 系・Hollandaise 系の3本。

古典体系を学ぶ意味は、レシピを再現するためではなく分岐の作法を知るためです。 「土台があって、そこに何を足すと何になるか」という思考が身につくと、 和・中・韓のソースも同じ目で分解できるようになります。

6. 世界のソース・カタログ84種

ここからは実物のカタログです。軸バッジ油脂 辛香旨味)は、 そのソースで主役になっている軸を示しています。作り方ルートは A=パンソース/B=乳化/C=混ぜるだけ。

🇫🇷 フランス(20種)

ソースルート骨格主役軸鶏との相性メモ
ジュ・ド・ヴォライユA鶏の焼き汁を煮詰めるだけ旨味最も素材を邪魔しない。皮パリを最大限に活かす
シャスール(狩人風)Aマッシュルーム+エシャロット+白ワイン+トマト+エストラゴン旨味鶏の定番中の定番。きのこの季節に
ディアブル(悪魔風)A白ワイン/コニャック+エシャロット+トマトペースト+カイエン、冷バターで仕上げ辛香グリルした鶏に合わせる古典。粗挽き胡椒を効かせる
シュプレームB鶏のヴルーテ+生クリーム、濾す油脂鶏出汁が土台なので純度が高い。胸肉にも合う
アルマンドBヴルーテ+卵黄+レモン油脂シュプレームより濃厚。かつて母ソースだった格
プーレットBアルマンド+パセリ+レモン名前の通り鶏用。酸で重さを抜く
ベアルネーズBエシャロット+酢の煮詰め+卵黄+バター+エストラゴン油脂牛の印象が強いが鶏にも強力。ごちそう枠
ショロンBベアルネーズ+トマトピュレ油脂色が華やか。酸が増えて軽くなる
ブールブランB白ワイン+酢+エシャロットを煮詰め、冷バターで乳化油脂温度管理さえ越えれば最短でごちそう化
ブール・ノワゼットBバターを焦がしてレモン+パセリ油脂3分でできる。ナッツ香が鶏の皮と好相性
ボルドレーズA赤ワイン+エシャロット+骨髄+ドゥミグラス旨味本来は牛向け。鶏なら骨付きもも肉で
シャルキュティエールAロベール+コルニション(酢漬けきゅうり)脂の多いもも肉を切る酸味
ロベールA玉ねぎ+白ワイン+マスタード玉ねぎの甘みが土台。作りやすい
ムタルド(マスタードクリーム)A白ワイン+生クリーム+粒マスタード油脂失敗しにくい万能枠。家庭の主力候補
エストラゴンクリームA白ワイン+クリーム+タラゴン辛香タラゴンは鶏との相性が突出している
ノルマンディー風Aシードル+生クリーム+りんご油脂甘酸っぱさが皮の脂を受け止める
ヴァン・ジョーヌ&モリーユA黄ワイン+アミガサタケ+クリーム旨味ジュラ地方の名物。鶏料理の最高峰の一つ
アイオリB/Cにんにく+卵黄+オリーブオイルの乳化油脂冷たいまま添える。冷めた鶏にも強い
グリビッシュ/ラヴィゴットCゆで卵・ケッパー・ハーブ・マスタード・酢火を使わない。作り置き可
ペルシヤードCにんにく+パセリ+オイル辛香焼き上がりに散らすだけで香りが立つ

🇮🇹🇪🇸 イタリア・スペイン・ポルトガル(13種)

ソースルート骨格主役軸鶏との相性メモ
サルサ・ヴェルデ(伊)Cパセリ+アンチョビ+ケッパー+にんにく+酢+オリーブオイル旨味アンチョビの旨味が鶏の淡白さを補う。万能
ピカタ風レモンバターAレモン+白ワイン+バター+ケッパー5分でできる。胸肉に特に有効
カチャトーラ(猟師風)Aトマト+玉ねぎ+オリーブ+白ワイン+ローズマリー旨味煮込み寄り。骨付きに向く
バルサミコ・リダクションAバルサミコを1/3まで煮詰める(+蜂蜜少量)materials 2つで完成。照りが出る
ジェノベーゼ(バジル)Cバジル+松の実+にんにく+パルミジャーノ+オイル辛香ナッツがとろみを担う。夏向き
ゴルゴンゾーラクリームA生クリーム+ゴルゴンゾーラを溶かす油脂塩気が強いので下味は控えめに
トンナートCツナ+マヨ/卵黄+ケッパー+アンチョビ+レモン旨味冷製。作り置きして翌日の鶏に
アラビアータ風Aトマト+にんにく+唐辛子辛香安価で外さない
ロメスコ(西)C焼き赤パプリカ+アーモンド/ヘーゼル+ニョラ+パン+酢旨味ナッツのとろみ。冷でも温でも合う万能株
アリオリ(西)Bにんにく+オイルの乳化(本来は卵なし)油脂アイオリのスペイン版。より攻撃的
サルサ・ブラバCトマト+パプリカパウダー+唐辛子+酢辛香じゃがいも添えの鶏に
モホ・ベルデ/ロホCコリアンダー or パプリカ+クミン+にんにく+酢+オイルカナリア諸島。クミンが効く
ピリピリ(葡)C唐辛子+にんにく+レモン+オイル辛香マリネにも仕上げにも使える二刀流

🇯🇵 日本(11種)

ソースルート骨格主役軸鶏との相性メモ
照り焼きA醤油+酒+みりん+砂糖甘旨糖が焦げるので火を弱めてから絡める
おろしポン酢C大根おろし+ポン酢(+大葉)脂を最も強く切る。皮パリと好相性
ねぎ塩だれCねぎ+塩+鶏がら+ごま油+酢+レモン辛香作り置き可。汎用性が最も高い和だれ
南蛮だれC酢+醤油+砂糖+唐辛子(+タルタル)揚げ・焼きどちらでも成立
味噌だれA味噌+みりん+酒+砂糖旨味味噌は焦げやすい。最後に絡める
梅しそC梅肉+大葉+みりん+出汁夏場。油脂ゼロで軽い
幽庵地A醤油+酒+みりん+柚子輪切り甘旨照り焼きの上位互換。柑橘で品が出る
柚子胡椒バターBバター+柚子胡椒+醤油少量辛香混ぜるだけで完成。反則的に簡単で強い
わさび醤油バターBバター+わさび+醤油辛香わさびは火を止めてから。香りが飛ぶ
和風あん(だし餡)A出汁+醤油+みりん+水溶き片栗旨味とろみが澱粉。冷めにくい
甘酢あんA酢+砂糖+醤油+ケチャップ+水溶き片栗子ども受けが最も良い

🇨🇳🇰🇷 中国・韓国(13種)

ソースルート骨格主役軸鶏との相性メモ
油淋鶏だれCねぎ+生姜+醤油+酢+砂糖+ごま油ねぎの食感がソースの一部。刻みは粗めに
よだれ鶏だれC黒酢+ラー油+花椒+醤油+砂糖+ごま辛香麻(花椒)・辣(唐辛子)・酸の三位一体
黒酢あんA黒酢+醤油+砂糖+水溶き片栗黒酢のコクは普通の酢では代替しにくい
芝麻醤だれ(棒棒鶏)C練りごま+醤油+酢+砂糖+ラー油油脂ごまがとろみ。冷たい鶏に最適
生姜ねぎ油C刻み生姜+ねぎに熱した油をかける辛香油をかける音まで含めて完成。塩だけで食べる
XO醤ソースAXO醤+紹興酒+醤油旨味干し貝柱の旨味。少量で決まる
甜麺醤ベースA甜麺醤+酒+砂糖+醤油甘旨味噌だれの中国版
豆豉ソースA豆豉+にんにく+醤油+酒旨味発酵の強い香り。好みが割れる
麻辣ソースA豆板醤+花椒+唐辛子+醤油辛香痺れと辛さを別々に設計する
ヤンニョムAコチュジャン+醤油+砂糖+酒(+ケチャップ)辛香甘辛の代表格。焦げやすいので最後に
カンジャン(醤油だれ)A醤油+にんにく+水飴+生姜甘旨ヤンニョムの辛くない版。照り焼きに近い
サムジャンCコチュジャン+味噌+ごま油+にんにく旨味包んで食べる前提。葉物と一緒に
パダン(ねぎ和え)C千切りねぎ+粉唐辛子+酢+ごま油+砂糖付け合わせ兼ソース。油を切る

🌏 東南アジア・インド(11種)

ソースルート骨格主役軸鶏との相性メモ
サテのピーナッツソースCピーナッツ+醤油/魚醤+ライム+砂糖+チリ+湯でのばす油脂湯を大さじ1ずつ足して濃度を決める
ヌクチャム(越)C魚醤+砂糖+ライム+水+にんにく+唐辛子油脂ゼロ。最も軽い部類
スイートチリC唐辛子+砂糖+酢+にんにく市販で十分。自作なら酢を強めに
グリーンカレーソースAグリーンカレーペースト+ココナッツミルク+魚醤油脂煮詰めてソース濃度にする
サンバルC唐辛子+シャロット+にんにく+トラシ(エビ発酵)辛香少量で強烈。添える量に注意
カオマンガイのたれCタオチオ(味噌)+生姜+にんにく+酢+砂糖旨味茹で鶏用だが焼きにも合う
レモングラス&ココナッツAレモングラス+ココナッツミルク+ライム+魚醤油脂香りの層が厚い
マカニ(バターチキン)Aトマト+バター+生クリーム+カスリメティ+ガラムマサラ油脂カスリメティが「あの香り」の正体
ティッカ・マサラAトマト+ヨーグルト+クリーム+スパイス旨味ヨーグルトの酸が効く
グリーンチャトニCコリアンダー+ミント+青唐辛子+ライム+ヨーグルト辛香驚くほど爽快。焼き鶏に直接
ライタCヨーグルト+きゅうり+クミン+塩辛いソースの相棒として

🌍 中東・コーカサス・北アフリカ(9種)

ソースルート骨格主役軸鶏との相性メモ
トゥーム(黎)Bにんにく+オイル+レモン+塩を乳化。卵を使わない油脂真っ白でふわふわ。にんにく好きの到達点
タヒニソースC練りごま+レモン+水+にんにく油脂水を足すと逆に白く固まる(面白い挙動)
ハリッサC唐辛子+クミン+コリアンダー+キャラウェイ+オイル辛香ヨーグルトと混ぜると使いやすくなる
シャッタC生唐辛子+パセリ+レモン+オイル辛香ハリッサより青々しい
ザータル+オリーブオイルCザータル(タイム+スマック+ごま)をオイルでのばす辛香混ぜるだけ。スマックの酸味が効く
シュクメルリ(ジョージア)A大量のにんにく+バター+牛乳/ヨーグルト油脂本来はバター・鶏・にんにくのみ。乳製品は後世の派生
サツィヴィ(ジョージア)Cくるみ+にんにく+コリアンダー+鶏出汁油脂ナッツがとろみ。冷製で供する
ヨーグルト+ミント(土)Cヨーグルト+ミント+にんにく+塩最も簡単な「軽くする」装置
アジカC赤唐辛子+にんにく+ハーブ+塩辛香塩気が強い。少量ずつ

🌎 南北アメリカ(7種)

ソースルート骨格主役軸鶏との相性メモ
アラバマ・ホワイトCマヨ+りんご酢+黒胡椒+レモン+西洋わさび油脂1925年、鶏専用として生まれた稀有なソース
バッファローBホットソース+溶かしバター(乳化)辛香2材料。バターが辛さの角を取る
ハニーマスタードCマスタード+蜂蜜+マヨ+酢外れない安全牌
BBQソースA/Cトマト+糖+酢+スモーク+スパイス甘旨糖が多く焦げやすい。塗るのは最後の数分
チミチュリCパセリ+オレガノ+にんにく+赤ワインビネガー+オイル+唐辛子辛香一晩置くと化ける。作り置き前提の設計
モーレ・ポブラーノA複数の乾燥唐辛子+ナッツ+スパイス+チョコレート旨味最難関。ソースの限界を見たいならここ
サルサ・ヴェルデ(墨)Cトマティーヨ+青唐辛子+コリアンダー+ライム伊のサルサヴェルデとは全くの別物

7. 黄金比カード ── 覚えるならこの12

84種のうち、比率で覚えられるものを抜き出しました。ここだけ暗記すれば、計量なしで作れます。

照り焼き

醤油2:酒2:みりん2:砂糖1

最も一般的な配合。覚えやすさを取るなら 1:1:1:1 でも成立します。砂糖は半量〜倍量で調整。

油淋鶏だれ

酢1:醤油1:水1:砂糖0.7

ホテル厨房の配合。水で薄めるのが要点で、ねぎを大量に沈める前提の設計です。

ヤンニョム

コチュジャン2:醤油1:砂糖1:酒1

辛さはコチュジャンの銘柄差が大きいので、まず基準で作って粉唐辛子で足すのが安全。

チミチュリ

オイル3:赤ワインビネガー1

パセリは「たっぷり」。酸を立てたければ酢を増やす。常温で一晩置くと別物になります。

アラバマ・ホワイト

マヨ2:りんご酢1

本家はもっと酢が多くシャバシャバ。塗るなら濃く、かけるなら薄くと使い分けます。

パンソースの仕上げ

ソース1カップ:バター大さじ1〜2

必ず火を止めてから。この一手で家庭の味が店の味に寄ります。

クリーム系ソース

油脂1:水分1

多くのクリームソースがこの比率に収まります。濃すぎたら出汁、薄すぎたら煮詰める。

よだれ鶏だれ

黒酢2:ラー油1〜2:砂糖0.7:ごま油0.5

花椒は別枠で「痺れ」担当。辛さと痺れは別々に調整すると設計しやすい。

甘酢あん

酢2:砂糖2:醤油1

ケチャップを足すと子ども向け、黒酢に替えると大人向けに振れます。

南蛮だれ

酢2:醤油2:砂糖1

照り焼きの「酒みりん」を「酢」に置き換えた形。同じ骨格の別解です。

ヌクチャム

魚醤1:砂糖1:ライム1:水3〜4

水で薄めるのが本体。油脂ゼロなので、脂の乗ったもも肉にちょうど良い。

ドレッシング型(ヴィネグレット)

オイル3:酸1

チミチュリ・モホ・サルサヴェルデはすべてこの派生。1つ覚えれば十数種に化けます

8. 味が決まらない時の処方箋

ソース作りで一番よく起きるのは「まずくはないが、決まらない」状態です。 これは足りない軸があるだけなので、症状から逆引きできます。

風味マトリクス ─ 手持ちのソースを地図に置く 濃厚(油脂が多い) 軽い(油脂が少ない) ベアルネーズ ブールブラン アラバマ・ホワイト トゥーム/アイオリ マカニ(バターチキン) シュクメルリ サテのピーナッツ シュプレーム おろしポン酢 ヌクチャム 梅しそ チミチュリ よだれ鶏 照り焼き BBQ ヤンニョム スイートチリ 濃厚×酸 ─ ごちそう+切れ味 濃厚×甘 ─ 満足感が最大 軽い×酸 ─ 日常・夏・脂を切る 軽い×甘 ─ ご飯に合う

図5:自分のレパートリーがどこに偏っているかを見る。空いている象限が伸びしろ。

症状足りない軸処方
ぼやけて締まらない②酸レモン数滴・酢小さじ1/2。最初に試すのは必ず酸
薄い・物足りない④旨味醤油・魚醤・アンチョビ・味噌をごく少量。塩より先にこちら
重い・くどい②酸/⑤香り酸を足す、またはハーブ・柑橘の皮・粗挽き胡椒
尖っている・角がある①油脂/③甘バター一片か蜂蜜少量。角が丸くなる
水っぽい⑥とろみ煮詰める(味も濃くなる)。急ぐなら冷バターか水溶き片栗
塩辛くしすぎた水を足さない。油脂か甘か酸を足して相対的に下げる
単調・平坦⑤香り仕上げに生ハーブ。加熱した香りと生の香りは別物として重なる

順番のコツ

味見して迷ったら 酸 → 旨味 → 油脂 → 甘 → 塩 の順に試すと、失敗が減ります。 塩は最も取り返しがつかないので最後。「塩を足したい」と感じた時の半分くらいは、実は酸か旨味が足りていないだけです。

9. トラブルシューティング

🔧 バターソースが分離した

  • 火から下ろし、氷を1〜2個入れて激しく混ぜる
  • または冷水/生クリーム大さじ1を加えて強く混ぜる
  • 原因はほぼ加熱しすぎ(65℃超)。次回は火を止めてからバターを

🔧 マヨ・アイオリが乳化しない

  • 新しい容器に卵黄(またはマスタード小さじ1)を入れ、失敗した液を少しずつ加え直す
  • 油を入れる速度が速すぎるのが主因
  • トゥームは油と水を交互に入れると割れにくい

🔧 照り焼きが焦げる・苦い

  • 糖が原因。火を弱めてからタレを入れる
  • 鶏を一度取り出し、タレだけ煮詰めてから戻して絡める
  • 味噌だれ・BBQも同じ理由で焦げやすい

🔧 クリームソースが分離した

  • 酸(ワイン・レモン)が強すぎるか、沸騰させすぎ
  • クリームは酸を煮詰めた後に入れる
  • ヨーグルト系は必ず火を止めてから

10. 皮パリを殺さない盛り付け

せっかく皮をパリパリに焼いても、上からソースをかければ数十秒で湿ります。 ここは技術というより設計の問題です。

① 皿に敷く

ソースを皿に流し、その上に鶏を皮を上にして置く。 皮は最後まで乾いたまま。クリーム系・ピュレ系に最適。

② 横に添える

チミチュリ・サルサヴェルデ・トゥームなど濃度の高い冷製は横に。 食べる人が量を選べる利点もある。

③ 肉側だけにかける

皮を上にして、断面と皿側にだけソースを回す。 照り焼きのように絡めるものは、そもそも皮パリを狙わない割り切りも要る。

逆に言えば、照り焼き・ヤンニョム・BBQは「絡める」ソースなので、皮パリとは両立しません。 「今日は皮を立てるのか、タレを立てるのか」を先に決めると、献立が破綻しません。

11. 次にやるなら

1
パンソースを1回やる 白ワインか酒で déglacer → 半量まで煮詰め → 火を止めて冷バター。これだけで図2の全分岐が使えるようになります。
2
ブールブランで温度を体験する 温度計があれば50〜55℃を狙う。一度わざと割って、氷で直すと、以後怖くなくなります。
3
図5の空いている象限を埋める 自分のレパートリーが偏っている方向と逆を1つ作る。多くの人は「軽い×酸」が手薄です。
4
ヴィネグレット(油3:酸1)を骨格として持つ チミチュリ・モホ・サルサヴェルデ・ザータルオイルが全部ここから出ます。投資対効果が最も高い1本